• THE VISION
    菅祐輔
    長野翔
    いつの時代も「知りたい」という探究心が人を動かし、盲目にさせた。
    「知りたい」という欲求は生活の中の様々な行動の根幹にあり、私たちは常にその欲求に惑わされている。世界の先端を行く権威ある研究チームから、相手の言動や表情から何を考えているのか邪推してしまうような人まで、「知りたい」という欲求は人それぞれ様々な規模で私たちの日常にまとわりついている。私たちは自分の興味のあることを「知りたい」がために人生の中で何度も一喜一憂する、愚かで愛おしい生き物だ。
    この面白さをコマ撮りアニメーションで表現したいと考えた。
    数ある「知りたい」のパターンの中から、「知りすぎると良くないこともある」という言い回しを採用して物語を制作することにした。
    目のない主人公は、自分の生きている世界が本当はどのようなものなのかを見てみたいと思いつつ、日々悶々と過ごしている。彼の唯一の友人は主人公のために不思議な目の力で無機質な部屋を変化させるが、主人公はその架空の世界には満足できず、より目が欲しいという思いが強くなっていく…。
    表現方法として人間の知覚情報の重要な部分を視覚が占めているという点から、「知りたい」という欲求を目に当てはめ、物語の鍵として表現したり、言葉ではなく身振りや表情などで物語を展開することで見る人もまた「このキャラクターは何を考えてるのか知りたい」となるような構成を意識した。また部屋や身体を単色の無機質なものに統一することで、「目が見えない世界」を比喩的に表現した。
    「知りたい」はとても純粋な欲求だ。生まれてまもない赤ちゃんは、とにかく恐怖心なしで何でも口に入れてみたり触ってみようとする。その中で失敗し、成長をしていく。「知りすぎると良くないこともある」という言い回しは、ある意味失敗を顧みない純粋な探究心に満ち溢れている言葉のように思えたことからこの言葉を選んだ。大抵物語ではこのセリフを言われた人物は不運な運命を遂げるが、リアルを生きる私たちには関係ない。そこから成長するチャンスが無数にあるのだ。