• ジェフリーバワによる理想郷のためのAkari
    高田紗里
    スリランカの国土は7万k㎡にも満たず、北海道より小さい。ジェフリー・バワの建築が多く集まる南西部には高速道路が近年開通し、自動車での移動が以前よりずっと楽になった。2009年に内戦は終わり、私が住んでいた頃とは比べ物にならないほど国は発展していた。
    バワの建築の特徴は自然の要素を建物に取り込んで一体化しているところ。重要なのは、自然の造形物や要素を、決して空間演出のために用いていないことだ。水や緑を人工的にコントロールして非日常感を演出するのではなく、ありのままに接し、建築と一体化した空間を存在させている。その姿は、20世紀に世界中を席巻したモダニズム建築とも趣を異にする。異文化が複雑に混ざり合ったスリランカで、ヨーロッパ人の血を引く上流階級として育ち、英国の建築学校で学んだからだろうか。その土地の風土や歴史をすくい上げ、建物に置き換えて表現することは彼にとってはごく自然な振る舞いだったのだろう。
    彼の建築からアカリを作った。
    日本に生きる私たちは暗闇のなかの深さを知らない。近年、照明は夜に昼をつくり出すかのような存在であり、暗闇は光の届かない部分として一括されてしまっている。明るいか暗い、だけではなく、光と闇の間に奥行きや幅を感じられる作品にした。
    素材の実験を繰り返すうちに、アクリル棒に光を当てると反対の面に光が届くことに気がついた。そこで、棒の間を絞ってみたところ、細まったところに光が集まった。光源から離れるに従って段々少なく、砂時計の砂のように小さな光が溜まった。それはまるで植物の節に見え、均一に作られた工業製品に命が宿った気がした。
    展示空間は光の中に没入する体験にするために、林の様に配置した。混沌と秩序の入り混じる世界を見て欲しい。一本一本は脆く繊細な葦が、大群となって力強く貴方を包み込むだろう。
    いつか一人でも、この作品をきっかけに、彼の建築を見にスリランカを訪れてくれる人がいれば本望である。