• 落ちつかない椅子
    津村芽瑠
    ゆらゆらと過ごす落ちつかない時間を、この椅子の上で。
    小さい頃からロッキングチェアが好きで、自分の部屋に置きたいと思っていた。結局、家にくることはなかったが、今でも見かけるたびに座りたくなる。ゆりかごのような安心感があり、リラックスできる素敵な椅子だ。だが私はというと、ゆれた反動で背中からひっくり返ってしまいそうで、実は毎回かなりへっぴり腰で座っていた。改めて考えると、ヒヤヒヤしながら座っていたのに惹かれているという矛盾に気がついた。ロッキングチェアの「動き」は、安心感とスリルという正反対の要素が、良いバランスで備わっているのかもしれない。
    この経験から「動き」に面白さを感じ、研究をはじめた。ロッキングチェアのようなスイングの動き、バネのような動き、揺らめき、動いて見えるもの等々。本来動かないものに動きを組み合わせて、両立するギャップを探した。最終的になにを作るかということは悩んだが、「動き」にポジティブな雰囲気を感じたため、遊びの要素を取り入れることが出来るものにした。椅子といいつつも、遊具のような乗り物のようなイメージだ。
    タイトルの「落ちつかない椅子」は、特徴を素直にあらわしている。この椅子に身を任せてリラックスすることはできない。足を踏ん張って、バランスに意識を集中させながら座る、落ちつかない椅子である。底面を三次曲面にしたことでスリルさが増し、遊具としての要素が強まっている。見た目からもゆらゆらとした動きを想像できるように、丸みを帯びたコロンとした形をしている。また、木材と布地の組み合わせで、優しい雰囲気をかもし出す。
    休むためでも運動するためでもないこの椅子は、なんとなく触りたくなったり、座った人をただゆらゆらと揺らすだけの椅子だ。そんな、意味もなく遊ぶための椅子があっても良いのではないか。たまには落ちつかないで童心にかえってみよう。