• 紙を身につける
    土屋はるな
    「伝統工芸品だと言われることが嫌だ」と職人は言った。多くの人にもっと使って欲しいのに伝統工芸と言われるとどこか距離感を感じる、違和感がある、という事だった。私は大学一年生の頃にその職人と出会ったが、未だにその言葉が忘れられない。卒業制作にあたり和紙という素材に着目したのは、この時の言葉が聞き流せなかったからだ。和紙という単語を聞いた時、どこか和であったり工芸というイメージを意識下に持っていないだろうか。私はこのイメージが和紙の使い方に制限をかけてしまっているのではないかと感じる。和紙とは『こういうもの』という意識が緩和され、しかし紙らしさを残した新しい視え方、魅せ方を提案する事で和紙の可能性を広げることを目的としている。和紙という既に出来上がっている状態から造形するのではなく、和紙の原料の一つ「楮」を使用して取り組んだ。自由な造形をする為に、水溶液の状態からカタチを作る。そこから紙の特性がみせる積層や溜まりの美しさ、紙らしい軽やかさと柔らかさをアクセサリーに落とし込む。紙らしさを落とし込む対象としてアクセサリーを選択した理由は、アレルギーや重さといった問題を紙が補い、また装飾品にする事で紙の持つ魅力を無駄無く自由に表現出来ると考えたからだ。そこで、一見すると紙に見えないが紙らしさが詰まったアクセサリーを作ろうと思った。制作の際に最も大切にした事は素材とカタチの組み合わせだ。例えば毛先の柔らかさを表現したい時はパーツを重ね、真っ先に印象が毛先になるようにと考えて造形する。墨色に着色を施した理由も上記の点があるからである。またアクセサリーのモチーフは蝶の動きや模様、輪郭から着想している。蝶が使われる柄には昔から「長く続いていく」「移り変わり」といった意味が込められている事が多い。蝶というありふれたモチーフを選択したのは、伝統工芸品の一つである和紙の姿形が変わっても今の在り方に囚われず、この先も使われ続いてあってほしいと願いを込めているからだ。紙のアクセサリーを通して日本のモノづくりを今一度思い出すキッカケとなれば幸いだ。